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何故、谷川俊太郎、何故、小松
谷川俊太郎さんをご存知でしょうか。教科書にも載っていて、名前は幾度か聞いていても歴史上の人物のように思え、遠い存在なのではないでしょうか。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など実に幅広い作品があります。
日本の文学と文化に多大な影響を与え続けた第一人者で、作品は英語、中国語など20数か国語に翻訳され、世界中の人々に親しまれています。2024年11月13日に老衰のため92歳で亡くなられました。
有名な谷川俊太郎さんですが、実に小松にはご縁のある方だったのです。きっかけは、1996年にALSで在宅療養をはじめられた西尾健弥さんが、好きな詩人の谷川俊太郎さんの詩の朗読を聞きたいと言われたことからです。榊原千秋さんが、じかにお手紙を書いて快諾頂き、1997年にホームコンサートが実現しました。
そのとき朗読された詩が「魂のいちばんおいしいところ」でした。その後、「生と死の文化を豊かにするコンサート」として、25年以上にわたり小松市内のお寺で10回を超えるコンサートを開催いたしました。西尾さんは、谷川俊太郎さんの詩に励まされ、私達は谷川俊太郎さんと、じかに接する機会に恵まれ、詩の世界、詩の哲学に触れることができました。また、ご子息であるピアニストの谷川賢作さん、詩人の覚和歌子さん、シンガーの小室等さん、木村弓さん、DiVaのまこりんと、実に多彩なゲストを毎回お迎えし、朗読や歌を聞くことができました。時には会食もご一緒することがあり、カラオケで谷川俊太郎作詞の「鉄腕アトム」の主題歌を大合唱したことは懐かしい思い出です。
谷川俊太郎さんはいつも物静かで、気さくでありながら畏怖の念を感じました。人の心の奥底まで見透かされそうな目と、発する言葉からです。圧倒的な力があり、人智の及ばないような雰囲気を醸し出されていました。流石に超一流の人物は違うなと感じました。これは詩を作り続けることによって、透徹した考えに達したからでしょう。その佇まいには、独特の雰囲気、輝きがありました。
詩の朗読が始まると、眼の前にパノラマのように宇宙が、自然が広がるのを感じました。谷川哲学の一端に触れ、自分らしく生きることを学んだように思います。
「ALSの仲間たち」の活動は、「いのちにやさしいまちづくり ぽぽぽねっと」に
なり、「NPO法人ホームホスピスこまつ」に引き継がれています。
小松の街づくりが、障がいを持った子どもから大人、病いと共に生きる人、高齢になっても安心して暮らすことを望む人達のためにも、生かされるよう願います。
私達の心の中で谷川俊太郎さんは生き続けています。
「ありがとう谷川俊太郎さん」としての、これまでの活動は、認定NPO法人取得が出来たことにもつながっています。認定NPO法人取得記念コンサートは、2025年11月3日に無事開催いたしました。今後、仲間たちと共に志を継いで広げられたらと思います。
さぁ小松市民よ、日本の、世界の谷川俊太郎を知ろう、学ぼう、楽しもう、偲ぼうと呼びかけます。
「魂のいちばんおいしいところ」
神様が大地と水と太陽をくれた
大地と水と太陽がりんごの木をくれた
りんごの木が真っ赤なりんごの実をくれた
そのりんごをあなたが私にくれた
やわらかいふたつのてのひらに包んで
まるで世界の初まりのような
朝の光といっしょに
何ひとつ言葉はなくても
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
りんごを実らせた人々のほほえみと歌をくれた
もしかすると悲しみも
私たちの上にひろがる青空にひそむ
あのあてどないものに逆らって
そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた
不動産遊民
都市研究家 調(しらべ) 亮(わたる)




